2013年03月03日

チェンマイ旅行記(8) 「タイの人びとは外食が多い」から考える

特に、「タイの人々は外食することが多い」と一般に言われている言説が気になった。確かに一歩ストリートを歩けば、テーブルひとつの小さな店を開いて料理を出す店に出くわす。マーケットでも、定食(風?)のセットから単品お総菜、お魚のフライからヌードルから辛そうなカレーから白ご飯に辛いペーストやソースにえごまのふりかけまで、何でもそろうようだ。白ご飯が売っているのはえらい驚いた。日本では「白ご飯ぐらいは炊く」よね。。。?いや、サトウのご飯もあるか。あ、最近よつ葉さんでも白ご飯売ってるなぁ・・・驚いた私の感覚こそ「古い」のかもしれない。それでも子ども付き旅行者の私たちにはとてもありがたいことだった。特に北部タイの主食、炊いた餅米(カオニャオ)。1膳分の量が小さなビニール袋に入れて売っている。タイ米だとおにぎりにできないが、カオニャオだと簡単。カオニャオに持参した梅干しを混ぜ、何個子どもたちにおにぎりを握ったか。。。

このような状況からは、家でご飯を作る必要がなさそうではある。社会の工業化にともなって女性の社会進出(それ自体は歓迎すべきことだが)が進み、女性も外で一日中働く、そうすると、家で作っている余裕はない。帰りに行きつけ(?)のおばちゃんの店で手作りメニューを購入する。もちろん、「おふくろの味」を大量に仕込み、街で販売するのも、女性だ。

ところが、使っている食材で気になったのが、どこか日本で見かけたことのあるような加工食材の数々。ヌードルに入っている魚とかエビのすり身団子とか、ちくわとか。。。ひょっとすると日本向け商品が作られるようになったあと、タイ社会に普及したんじゃないかと思えてくる。

とにもかくにも、毎日の献立に頭悩ませる主婦の私としては、なんだかうらやましい気もする。うん?よく考えれば、日本でも「中食」は大流行ではある。タイのように街角でこそ「おふくろの味」の肉じゃがとか炊き合わせを買うことは不可能ではあるが(今は可能?)、スーパーのお総菜コーナーや半調理品の冷凍食品コーナーは年々広がる勢いだ。日本でも「食事作りはアウトソースすべし」という風潮が広がっているわけだが、これはここ近年の現象だ。日本では、伝統的な調理方法の継承が困難になるなど、この現象に付随するデメリットも取り上げられて久しい。子どもたちの「食育」をやっきにやったところで、おうちの食事がすべてアウトソースされていては「食」を学ぶ機会自体が少なければ効果はあまり期待できない。タイではどうなのだろう。やはり工業化の後の現象なのだろうか。また、非常に豊かだと有名な北部タイ料理だというのに、家庭で作られなくなることで弊害は出ていないのだろうか。。。

「食習慣」で目にとまったのは、公立小学校の下校時刻の少し前に並び出す「軽食の出店」だ。時刻は夕方5時。次から次へと校門から出てくる子どもたちと、彼らを迎えに来た親たちでごったがえす小学校校門前。通りを隔てた並びには、揚げたお菓子からホットケーキ風のおやつ、サラダ、ヌードル、あるいはスナック菓子やジュースを売るお店がずらりと並んでいた。そしてその前にむらがる小学生とお迎えの車やら自転車で、てんやわんやだった。カロリー高そうな上(油っぽいのにあまりいい油が使われていないという)、栄養価は期待できない感じのお菓子を、小さなお財布をあけて取り出したお金を店員に渡して購入する子どもたち。明らかに肥満体質な子どもたちも多く見かける。日本も同じだが、生活習慣病が増えているのだろう。

上記は「公立小学校」の話だったが、これが「私立」となると話が異なるらしい。今回非常にお世話になったタイの友人のお孫さんが通う小学校では、「帰り道の買い食い(?)が禁止」されているらしい。理由は、「子どもたちが口にする食べ物に気を配っているから」。中流階級以上の家庭では、こんな理由もあって私立に通わせるとのことだ。貧しい人がより「健康によくない」食生活を送ってしまう、というのは、世界共通の話だが、あんな風にジャンクフードに群がるあどけない子どもたちを見ると悲しくなる。

「食事はアウトソースされるべきではない」から、「忙しくっても家でご飯を作るべきだ」とか、「働く時間を短くして食事を自前で作るべきだ」、という言説も見られる。ただ、「忙しくっても手料理」を作るべきとされるのは、往々にして女性であることに違和感を感じる。ただ、私はやはり「おいしいものを作って食べる」に時間をかけたい、と思うのだ。自分や家族で囲む食卓を彩る食事だからこそ、使用する食材がどのような育てられかたをしてどのようにキッチンまで届いたのか、どういう風に下処理をして、調理して、どんな「秘密の調味料」を使ったから「おいしい」のか、作った家族のメンバーが生き生きと語る場面があると、なおさらおいしいと思うからだ。働く時間が長すぎて疲れすぎて、こんな場面まで「アウトソースされた側」に預けてしまっていては、もったいないではないか。そうするとどうすればいいのだろう。やっぱり女性も男性も、子どもたちも、「おうちでご飯」という贅沢を堪能できるよう、子どもやパートナー同士で一緒にご飯づくりができる時間が割けるような働き方をすることが権利として保証されるようになればなぁ、と思う。「おうちで手間暇かけたご飯」こそが「贅沢である」、そんな価値観が主流になる世の中になれば、食に付随する様々な問題がゆるやかに解決していくのではないだろうか、そう思えるのだ。

上記の話は実は、「街中の話」。私もそうだが、地方の、農山村地域在住人にとってみれば、まったく関係のない話だ。そもそもスーパーが遠い。家出て車でスーパーへ、地方ならではの広大な駐車場に車停めて買い物して帰ってくる、ぐらいなら、作った方が早い。しかも農山村の購買層を考えると当然なのだが、お総菜コーナーは全く充実していない。スィーツだってパンだって売ってはいるが、こだわり食材のスィーツや私好みのハード系の天然酵母パンのお店は、街中に行かないと出会えない。

ところがチェンマイではそういうわけでもないようだ。もちろん山のど真ん中まで行ったわけではないが、チェンマイから少し外れた地域でも、いわゆる中心地があって、そこでマーケットで見たようなお総菜やら調理済みメニューが並んでいたようだ。勝手な感覚で言っているが、「おふくろの味」であることには街中のマーケットのお総菜も郊外のそれも、そう変わらない感じがする。だからだろうか、訪ねたオーガニック農家で、「自分たちのお昼ご飯用に買ってきた」お総菜をいくつか勧められた。自分たちの農園で取れたお野菜を使ってご飯を食べてないのかな。たまたま、だったのかな。もちろん、ピーナンさんのお母さんのように、ご飯は作るもの、という方もいらっしゃるのだろうが、チェンマイの農山村では日本の田舎よりもさらに「食はアウトソース」が進んでいる様子がうかがえて、少し気がかりであった。

話がいろいろ脱線したが、もともと「外食が多いタイ」の何が気になったかというと、その「値段」である。日本円から換算するともちろん安く感じられ、大盤振る舞いも可能な金額ではあるのだが、タイの平均月収からすると非常に高価に思えるのだ。たとえば、日本で月給15万円の人が、街角の安いヌードルでもひとつ700〜1000円払う感覚だ。実は1つでは足らない量だから子ども2人と大人2人では6つぐらい頼むことになり、合計6000円にもなる計算だ。ランチバイキングに1人4000円、という具合だ。(これは、大卒の月給が約15,000バーツと聞いたので、それを元に荒い計算をしてみた。すべてバーツを10倍した金額を円として考えています)やはり外食ばかりしていたら、たとえ安価な街角の食堂であっても大変なはず。いったいどうなっているのだろう。。。短期滞在では、もちろん全くもってよく分からないまま終わったのだった。ちなみにスターバックスのコーヒーは100バーツ、1杯1000円!絶対飲めません。。。

タイ政府は「今後5年間、自動車、電子/コンピュータ、食品加工、医療、観光の5つの分野に力を入れて行く」と宣言している。これら分野の高度な教育にも力を入れる。「高度な技術力を有しながらも安価な労働力を提供」する、「情勢も安定したタイ」をアピールし、国内外の投資を促す路線だ。ところが少し思い返す。大卒のエンジニア、英語もぺらぺらなディーさんは、外国人観光客相手のタクシー兼ガイドの方が儲かる、あるいは仕事がある、という状況である。高度な学力を持った安価な労働力、というのは、ディーさんのような層を生かしたビジネスが増えることを目指しているのではない。海外からの投資で増えていく食品加工工場での「有能な工場労働者」を生み出すことを目指しているように思えてならない。その「安価な労働力」は収入が安定することで、中流階級となり、確実な購買層になりマーケットも拡大するだろう。それでも、その一方で物価も上がるはずだから、結果的には可処分所得は減るかもしれない。時間も減る。ますます外食をする。外食産業のニーズが高まり、工場で作られた加工品のニーズも高まる。。。なんだか、住みやすい常夏の国、ほほえみの国のイメージから遠のいてきた。

posted by namy at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | チェンマイ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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